【体験談】食育について考えるきっかけに−ワーキングホリデーでファーム生活をする価値!

藤澤 実瑞姫さん 2019年5月8日


ワーキングホリデービザでご渡航をされた藤澤 実瑞姫(Ms Mizuki Fujisawa)さん。ブリスベンで3ヶ月語学学校のインパクト・イングリッシュ・カレッジに通学をした後、クイーンズランド州にあるBundabergでのピッキング、ビクトリア州にあるYarckでのファーム生活を経験。

日本ではなかなか経験出来ない広大な敷地でのファーム生活。ファーム探しだけでなく、お仕事中に悔しい・辛い経験をすることもあったそうです。しかし、ある出来事がきっかけで食育について改めて考えるきっかけに・・・

そんな実瑞姫さんの体験談です!ワーキングホリデービザでご渡航をご検討中、セカンドビザも検討されている方は、ぜひお読みください!!!!


渡航をしようと思ったきっかけ

日本では、動物看護師として勤務をしており、私の職場である動物病院を通りがかったオーストラリア人獣医師と知り合ったことが、オーストラリアに渡航をしようと思った一番のきっかけです。その後、ちょうどその当時5年程付き合っていた方と別れたことを機に、ワーニングホリデーとして長期的に海外に住むことを決めました。


ファームジョブ探しは意外と難しい


渡航後は、ブリスベンの語学学校に3ヶ月程通学しました。なんとなく、セカンドビザのためにファームの仕事をしないといけないとは知っていたものの、ファームの探し方が全く分からず、インスタグラムでタグ検索からファームワークをしている人に片っ端からDMを送り、色々質問をしましたが9割くらいの方は私と同じように探し方が分からず、とりあえずSNS等で見つけたので来てみたファーム。というような感じで良し悪しも分からず働いているような雰囲気でした。

語学学校では中級レベル(Intermediateレベル)で卒業しましたが、「英語力に自信がある!」と言うには程遠く、且つオーストラリア人の友達もあまりいなかったため、アドバイスをもらう事もできず、日本語表記のある日豪プレス、Facebookで検索をかけて一番最初に見つけたものに申請しました。

インターネット上で"オーストラリア ファーム"と検索するとファームについての情報が溢れているようで、結局行き着くところは自分が稼げたか稼げなかったか、または稼げなかったーブラックファーム。というような感想文というような具合で、どういうところがまともなファームで探す時の注意点などを書いているページはとても少なかったことを記憶しています。

これは単にファームジョブをするのは3ヶ月(ほとんどの人は一度きり)なので次に活かすこともあまりない為、違法だろうが、稼げなかろうが、1ヶ月以上働かないとカウントを貰えなかろうが、仕方ないか!と、真剣に考える人が多くいないように感じました。


6週間のピッキングジョブ (Bundaberg)でのお話


最初の6週間は、クイーンズランド州にあるBundabergに行きました。

・仕事内容
ピッキング(完全歩合制)
ワイヤー張り(時給$15)

トマト:1バケツ=$1.5
ズッキーニ:1バケツ=$2.1
パプリカ:1バケツ=$1.9
※トマトとズッキーニは1バケツあたり10キロ以上はあったと思います。

ピックアップ代:$7/日
レント代:$130/週

あまりパプリカが実っていない時、4バケツ取るのに3時間かかり、その日の仕事は終了。稼いだのはたったの約8ドル。(ファームまでのピックアップ代が7ドル・・・・もちろんマイナスになっている子もいました)

このファームは日豪プレスとFacebookで募集をかけられていたファームで、どちらも募集をかけていたのは日本人でした。求人ページを鵜呑みにしたわけではありませんが、その記事には初心者でも$500〜800/週は稼げますと書いていましたが、実際6週間働いた私の一番稼げた週給は$340でした。

私は常に時計を携帯して時給の仕事の時間、何を何バケツ取ったかなどを逐一メモしていました。ですが、時給の時間が合わずボスに掛け合ったところ、「他の人は何も言ってこない。文句をつけてきたのは、お前だけだ。だからお前が間違っている。」と言われ、私は始まった時間・終わった時間を必ず確認していると言いましたが、他に証拠はなく悔しい思いをしたことを覚えています。

そのファームを辞めた後、ペイスリップ(給与明細)を要求した際も写メで送られて来たのみで、時給とsuper annuation(年金)の記載がなかったのを不審に思い、正式なペイスリップとsuper annuation(年金)を払ってほしいと要求したところ、その後一切返事がなくなりました。こういった悔しい思いをしている日本人がたくさんいる中で、私は次にそのファームに来る人たちに同じ思いをしてほしくないと思いfair workという公的機関に報告することにしました。

少し厳しい見方をすると、私がfair workに報告する事を知ったファームメイトたちの「他力本願」さもとても痛感しました。

同じく悔しい思いをしている子たちまでもが「頑張ってね!」「私の分もやってくれる?」「みずきさんが報告して動いてくれたら、自分の誤魔化された分の給料も戻ってきますかね?」

といった具合に、誰か勇敢な人がやってくれるだろう。という、ただ傍観する人がとても多く、自分の未来の為に、次来る人が嫌な思いをしないためにという思いをあまり感じることはありませんでした。

問題に直面した際に、誰かがするだろう、ではなく自分が発信していくことで他の人が嫌な目に合うことを防げる、それは他人のためだけではなく、ダメなことはダメだと発信できる環境を私たちが作っていくことで、後々自分たちのためにもなる。と自分自身の問題として捉える必要があるのではないかと考えさせられました。


ピッキングファームで働いて良かったこと

想像はしていましたが、やはりピッキングジョブは重労働で、自分の部屋からトイレまで歩くことが出来ないくらい疲労困憊した日もありました。

ただ働き始めた後、スーパーに並べられた野菜を見たときに、野菜や果物がスーパーにならんで人の口に入るまでに、どれだけ沢山の人たちが携わってどれだけ多くの人が汗水を垂らして働いているんだろうと想像できたのです。

私たちはスーパーに行けば何でも手に入る暮らしをして悠々自適に買い物をしていますが、その裏で沢山の人の手によってここまで運ばれてきた経緯がある事を実感しました。


仕事探しに悪戦苦闘した2つ目のファーム


私は動物に携わる仕事を日本でしていた事もあり、ピッキングの後は必ず牧場で働くと決めていました。特に馬と働きたいと思っていましたが、オーストラリアでは馬は食用ではなくペットとして飼われている為、且つ馬の飼い主は日本でもオーストラリアでも少し神経質な方が多いため、やはり大動物の経験がないワーキングホリデービザへの求人は全くといっていいほど出ていませんでした。

基本条件は馬と働いた経験2年以上、又は牛等の大動物の経験がある、馬に乗れる、など経験があってなんぼなところがほぼ100%でした。それでも一度決めたら諦めれない性格のせい、、お陰で?、、何度落ちても、経験がないと雇ってもらえないよと言われても、レジュメを送り続け、50件以上はアプライしたと思います。

そして、メルボルンの北側エリアYarckでトライアルを受けれることに決まりました。やっと掴み取ったチャンスと思ったのもつかの間、ハプニングが、、

当時ブリスベンに住んでいたのでメルボルンまでの飛行機を予約していました。ところが出発する3〜4日前に「別の子がもう決まってしまったからこの話はなしで!」と連絡があり、安い航空券だったためキャンセルもできず経験がてら見学には来ていいよと言われたので、次に活かす為に伺うことにしました。

そこには私の代わりに決まったファーム経験豊富なオーストラリア人の女の子が既に働いていて、やはりファーストコンタクトではネイティブと経験には敵わないと痛感した出来事でした。1週間ほどステイさせてもらうことになり、その間にビクトリア州でのファーム仕事が見つからなければブリスベンに帰ろうと思って毎日その子と働きながら今まで通りレジュメを送る日々を続けていました。

すると、ボスが私にもチャンスをあげたいと言い始め、その女の子も、彼女には兄がいてイギリスでワーキングホリデーをしていること、私の姿が兄と重なって見えて兄の周りにいる人たちが兄に親切であってほしいと思うのと同じように彼女も私に親切でいたいと言って、「私にとってはただの仕事で他を探せるけど、経験がないと探すのは難しいと思うしあなたはセカンドビザがかかってるから、そっちの方が大切だよ。」と既に決まっていた仕事を私に譲ってくれたのです。

このファームでの仕事内容は、下の通りです。


飼育動物:馬(2)、山羊(17)、豚(51)、ロバ(3)、羊(36)、アルパカ(1)、鶏(260)、クジャク(1)、犬(3)、猫(2)

( )内は、最大の飼育頭数です。
健康管理
餌やり
卵の回収、洗浄、パック詰め
鶏小屋、豚小屋の掃除
草むしり
畑の水やり
怪我、病気の子の管理

毎日全ての動物を確認して食欲があるか痩せてきていないか(餌の量が適切か若しくは何か問題があるのか)、怪我をしていないか、その他に変化がないかなどを全て1人で行いました。



ファーム生活中に印象的だった出来事


泣きながらお肉を食べることが、人生にあと何回あるだろうかと考えた日がありました。

それは、とても可愛がってた子豚を屠殺場に送り出した日。

4頭の内の1頭がボスが別のファームから買ってきた後すぐに体調を崩し、みっちり看病してたのもあり、とても懐いてくれていた本当に可愛い子たちでした。

いつも子豚を屠殺場に送るために荷台に乗せる時、重たいのと暴れるのとで普段は二人掛かりで両手と両足をもって1頭を持ち上げていましたが、その日はどうしても自分でやりたく、ボスには出てもらって1頭1頭、泣きながら抱っこして荷台に乗せていきました。

あまりに泣いていたのでボスが見兼ねて、この子たちを残して別の子豚を連れて行こうか?もし私が望むなら生かしてここで繁殖用として飼ってもいいけど?と聞いてきたくらいに涙が止まりませんでした。

食用の豚には珍しく、とても人懐っこくて人に凄く慣れていて小屋に入ると触って触って!と足元によってきて、犬や猫のようにゴロンとお腹を見せるような本当に可愛い子たち。じゃあ、別の子豚たちは可愛くないかと聞かれたらそうではなく。。

私に慣れてる慣れてない基準で順番を決めるのは正しくないと思いました。そして食べる用だから仕方ないと自分に言い聞かせるのも私は違うと思いました。

私が働き始めて1週間ほどの頃、まだ生まれて間も無く病気をして他の子より大きくなれないので、ペットになった子豚(コブちゃん)がいて、その子は私が働いていた3ヶ月間、他の犬と同じように私について回る可愛い子でした。

コブちゃんの兄弟たちが屠殺場に連れて行かれたあと、お肉を食べたときもその子たちの事が頭に浮かんでただただ涙が溢れて、私はビーガンでもベジタリアンでもないのでさばかれたら、見た目は完全に普通の豚肉でしたが、実際そのお肉を食べることには、とても抵抗がありましたし、辛かったです。

それでも食べないともっと申し訳ない気がしました。



飼育数がそこまで多くないこと、全部一人でお世話していると一頭一頭のキャラクターも見えてきます。扉を開けると必ず脱走を試みる子、怖がりだけど私の事が気になる子、ボケーッとしてる子、ご飯の時だけテンションが上がる子、ご飯よりもヨシヨシされるのが好きな子、、

特にその子たちもコブちゃんの兄弟もとても人懐っこくて撫でたり抱っこしたりするのも割と平気な珍しい子豚だったので、人生で何番目かに入るくらい辛い出来事でした。

もともと動物関係の仕事に就てたこともあり、食肉について自分なりに考える機会は沢山設けてたつもりでしたが、こういう直接的な生産農家の仕事に携わると、より食育は本当に大切だなと痛感させられました。

スーパーに並べられているお肉はただの"お肉"じゃないこと。綺麗にパッキングされたお肉は動物ではなく"お肉"にしか見えないですが、少し前までちゃんと呼吸をしてご飯を食べて生きていた子たちだということ。

一頭一頭すごくすごく可愛くて個性がある動物たちを自分たちのために殺してて。捕まえた時の動物たちの叫び声を聞きながら心を痛めて、それでも働いている人もいること。中には家畜に対して何も感じない人がいるのも事実ですが、それはそれで悲しいことで。

だから、動物たちにも自分たちが出来ない仕事をしてくれてる人たちにも感謝の気持ちを忘れたらいけないと、せめて食べ物を残して廃棄するのはやめないといけないと。 廃棄のために死んでいくなんて可哀想すぎるから。と、もし子供が産まれたら教えてあげたいなと思いました。


考えるきっかけをくれた卵のお話


ファームで取れた、上のイビツな形の卵の写真をSNSにあげて、

もしも、こんな卵がパックに入ってたらどう思いますか?
気持ち悪いって思う?
別のパックに変える?
何とも思わない?
それともラッキーって思う?と質問しました。

ほとんどの人は別のパック買う。気にしない人、なんとも思わない人はごく少数でした。

これはふと食育と物事の捉え方について気づいたことですが、実際こういう歪な形の卵は100個あたりに1つ未満くらいの確率で入っていました。私は牧場で働き始める前であれば、完全に違うパックを選んでいたと思います。何故なら見慣れていないし、得体が知れないから。

でもそれを根本的に考えると、何故、見慣れていないかって業者が形が歪な商品を市場に出さないからで、それはは、私たちはA級品だったり形が平均的なものを求めて、傷物を良しとしない風潮があるからではないかと思いました。同じものを食べて同じ水を飲んで、ケージフリーで、基本的に薬もペレットも一切使わないオーガニックの鶏からでも、こういう卵がでてきます。

鎌倉幕府が出来たのが何年か、なんて事は沢山教えられるのに自分たちに直接的に関係してる食について教えられる機会はほとんど無くて、だから得体が知れないし、私たちはいかに食べ物が出来るまでの過程を知らずに育ち、それに加えて物事の捉え方についても偏りが出来てしまいます。


前まではほぼ100%の確率で私も別のパックを購入していたと思いますが、今はこういう卵を見つけたら個性的な形!ラッキー!と思うように捉え方が変わりました。何故かというと、食べても大丈夫と知ったから。

知ることで安心感が湧いて、その個性を受け入れられるようになるのは人種間においても言えることなのではないかなと思うのです。ニュージーランドのクライストチャーチでのモスクの銃撃事件も、イスラム教ってテロリストばっかり?などと、実際のことを知らないから(知ろうとしないから)差別が生まれるし、漠然と怖いというイメージだけが先行して亀裂だけがどんどん深まっていくのではないかと思いました。

お互いを知ろうとすることは本当に大切なことで、自分たちと違うものを排除するのではなく、このイビツな卵の様に一つの個性として受け入れられるようになれば世界がもう少し平和になるのではないかなと考えさせられたお話です。


超ど田舎生活を楽しく過ごせた訳


元々自然が好きで動物も大好きだったので、ドドド田舎の牧場に一人で住み込んで生活することは基本的には苦ではありませんでした。

週に一度ボスが様子を見にきて食材の買い物に一緒に行くのですが、自分用の車がない田舎暮らしとなるとそれ以外の日は話し相手が動物しかいない環境で、ボスとギクシャクした時期もあり、人が恋しくなることもちらほら、、




そんな時、以前ここのファームで働いていた人宛の手紙が何通も届いていたことをボスに伝えても忙しいからと長い期間放置されていて不憫に思い、SNSでフルネームを調べて直接、手紙のことをDMしたのがきっかけで同じファームで働いていたという事もあり意気投合してお友達になりました。

私が車を持っていないことを話すとここの近所に知り合いがいるから私のことを話してみるよ。といって紹介してくれた近所に住むオーストラリア人が、その後のファーム生活をより楽しくハッピーなものにしてくれました。



週に一度くらいのペースで一緒に出かけたり、彼女はカフェのオーナーだったのでカフェの買い物について行ったり、とにかく一緒にいる時間が楽しくて、最終日には彼女の所に泊まらせて貰いその日の夜はシャンパンでお祝いまでしてくれました。

私は、また必ずyarckを訪れると思います。彼女や他の素敵な人たちとの出会いがあったのもファームジョブをして良かったと思える理由の一つです。


ワーキングホリデーで渡航をして、ファームへ行くことを検討しているあなたへ


きっとセカンドのために仕方なくファームに行く人が多いのではないでしょうか。ですが私はファームで働くことができて良かったと思っていますし、自分の価値観に影響を与えてくれた、とてもいい経験になったと思っています。

ファームに行く価値は、オーストラリアでしかできないことで、日本にいたら携わらなかったであろう仕事に関われることです。そして、ただ働くのではなく自分が食べているものへの感謝や当たり前が当たり前ではないこと。いわゆる物事そして食育について考える力を身につける機会になると思います。

そして他人任せにするのではなく自分の権利を自分で調べてみたり、知識をつけたりすることはとても大切なことだと思います。例えば最低賃金を知ることや、自分が不利な契約で働かされていないか、など。違法で全く稼げないのに足元を見られてズルズル働くよりは、ダメだと思ったら辞める勇気も必要だということ、日本人が紹介しているから安心という訳ではないということを知っていて欲しいです。

日本人は辛抱強く我慢する人が多い傾向にありますがダメなことや嫌なことは声に出して「NO」と言うべきですし、郷に入れば郷に従えというように、ここでは意見を伝えることが重視される国だということ、日本ではなくオーストラリアだということを頭に置いて過ごしてみるといいかもしれません!